源内をAWSで動かすといくらかかるか——構成別コスト試算
源内(GENAI)をAWSで動かす際の月額コストを、RAGの有無・S3 VectorsかOpenSearch Serverlessか・WAFの要否で構成別に試算します。

目次
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「源内、うちでも使えそうだけど、結局AWSでいくらかかるの?」
商用利用できると分かっても、次に気になるのは自社で使ったときの月額です。「良さそう」で検討を止めずに稟議や予算要求へ進むには、構成ごとの固定費と従量課金を分けて見ておく必要があります。
この記事では、実際にAWS上でGenUベースの構成を触っている立場から、源内を動かす構成別にAWSの月額コストを試算します。RAGの有無・バックエンドの選択・WAFの要否で、コストは数倍以上変わる可能性があります。
この記事でわかること
- 源内を動かす最小構成(PoC・RAGなし)のAWS月額コスト目安
- RAGを追加するとコストがどう変わるか(S3 Vectors版 vs OpenSearch Serverless版)
- WAFを有効にする場合の追加コスト
- AWS公式の最新料金を使った試算方法と、自社で見積もる際の考え方
前提知識
- 源内AIとは何か、源内AIのコードをGitHubから読む を先に読んでおくと、構成要素の役割がわかりやすくなります
源内のAWSコストが「構成」で大きく変わる理由
源内(genai-web)はAWSのOSS「GenU」をベースにしたセルフデプロイ型のサービスです。国がAPIを運用しているわけではなく、自社のAWSアカウントに構築するため、コストは選んだ構成次第で大きく変わります。
コストの分かれ目は主に3つです。
- RAG(社内文書検索)を使うかどうか
- RAGのバックエンドにOpenSearch ServerlessかS3 Vectorsのどちらを使うか
- WAF(IP制限・地理的制限)を有効にするかどうか
本記事の数字は2026年9月時点のAWS公式料金と、東京リージョンのAWS Price Listをもとにした試算です。実際の請求額は使用量・データ量・料金改定によって変動するため、あくまで目安です。
順番に見ていきます。
構成①(最小構成・PoC・RAGなし)でいくらかかるか
RAGを使わず、genai-webのポータル機能とチーム管理・ExApp連携だけで動かす最小構成です。CloudFront・S3・API Gateway・Lambda・Cognito・DynamoDBが立ち上がりますが、いずれも従量課金型で無料枠が大きく、数人規模のPoCであればほぼ無料枠に収まります。詳しい条件はAWS公式の無料利用枠ページで確認しておきましょう。
コストの中心になるのはAmazon Bedrockの利用料です。Bedrockはトークン単位の従量課金で、固定の月額最低料金はありません。
PoC規模の利用(月間数千リクエスト程度)であれば、この構成の月額コスト目安は$10〜40程度(約1,500円〜6,000円)です。RAGを使わないシンプルな構成であれば、この範囲に収まるケースが多いと考えています。
RAGなしでも動く構成ですが、社内文書を検索させたくなった時点で次の壁にぶつかります。
構成②でRAGを追加すると何が変わるか(S3 Vectors版 vs OpenSearch Serverless版)
源内(genai-ai-api)のRAGは、Amazon Bedrock Knowledge Baseをベースに、S3 Vectors版とOpenSearch Serverless版の2つのバックエンドから選べます(genai-ai-apiには両方のCDKスタックが同梱されています)。この選択でコストが大きく変わります。
S3 Vectors版(低コスト構成)
S3 Vectorsは低コストのベクトルストレージです。料金は次の要素で構成されます。2026年9月時点の公式料金では、クエリはAPI呼び出し回数だけでなく、処理したデータ量と返却したデータ量も課金対象です。単価はリージョンで異なるため、最新値はAmazon S3 PricingかAWS Pricing Calculatorで確認しておきましょう。
| 項目 | 課金単位 |
|---|---|
| ベクトルストレージ | GB-月 |
| データ投入(PUT) | PUTしたデータ量 |
| クエリAPI | API呼び出し回数 |
| クエリ処理 | 処理したデータ量 |
| クエリ結果 | 返却したデータ量 |
たとえばベクトルデータ1GBを格納し、月間1万回検索する小規模構成では、ストレージとAPI呼び出しだけでなく、ベクトル数・次元数・検索時に処理するデータ量・返却件数を入力して見積もります。文書1,000件が必ず1GBになるわけではないため、元文書数だけで料金を決めないことが重要です。
本記事で想定する小規模PoCでは、S3 Vectors部分を月$1未満に収める計画値としています。ただし、これは検索量と処理データ量が小さい場合の目安であり、データ投入費用は初回・更新時に別途発生します。構成①と合わせた計画値は月$10〜41程度です。
OpenSearch Serverless版(標準構成)
一方、genai-ai-apiのOpenSearch Serverless版はClassic collectionを作成します。Classic collectionの最小キャパシティは、standby replicaを無効にした開発・テスト構成では合計1 OCU、冗長化を有効にした構成では合計2 OCUです。現行リポジトリのragKnowledgeBaseStandbyReplicasはデフォルトでfalseです。東京リージョンのOCU単価を$0.334/時間として試算します。
24時間稼働で試算すると、次のようになります。
1 OCU × $0.334/時間 × 730時間/月 ≈ $244/月(約36,600円/月)
これが、OpenSearch Serverless版の固定費を先に確認しておきたい理由です。検索回数が少ないPoCでもこの費用がかかるため、利用量に応じた費用とは分けて予算に入れておきましょう。実際の見積もりでは、AWS Pricing Calculatorの最新単価を使います。
高可用性のためにstandby replicaを有効にする場合は、最低2 OCUとして約$488/月になります。データ量や処理量によるスケールアウト分は含めていません。本番構成を見積もるときは、standby設定と最大OCU上限もAWS Pricing Calculatorへ反映しておきましょう。
なお、OpenSearch ServerlessにはNextGen Collectionsという新しいコレクション種別があります。10分間リクエストがないと自動的に0 OCUまでスケールダウンする「Scale to zero」機能が使えます。ただしこれはコレクショングループという単位で明示的に設定する必要があり、Bedrock Knowledge Baseが自動作成する標準的なコレクションでそのまま使えるとは限りません。PoC・開発環境など、常時アクセスがない用途では検討する価値があります。
構成が固まったら、次はセキュリティ要件に応じたWAFのコストを見ていきます。
WAFを有効にする場合の追加コスト
自治体・金融機関はもちろん、個人情報を扱う企業、社内限定システムとして運用したい場合、ISO27001等のコンプライアンス要件がある企業など、IPアドレス制限・地理的制限が求められる場面は業種を問わず広くあります。こうした場合はAWS WAFを有効にします。ただし、genai-webのWAF実装はIPアドレス許可リスト+国制限のみで、AWS Managed Rulesは使用していないことには気を付けておきたいです(詳しくは源内AIのコードをGitHubから読むで解説しています)。
AWS WAFの料金は以下の通りです(月額固定費は全リージョン共通)。
| 項目 | 単価 |
|---|---|
| Web ACL | $5.00 / 月 |
| ルール | $1.00 / 月(ルールあたり) |
| リクエスト処理 | $0.60 / 100万リクエスト |
genai-webはCloudFront用(us-east-1固定)とRegional用(ap-northeast-1)の2つのWeb ACLで構成されます。固定費だけで$10/月(約1,500円)で、ルール数と処理リクエスト数に応じた料金が加わります。Bot Controlなど追加のマネージドルールを導入する場合は別の課金要素があるため、ここでは含めていません。
ここまでの3つの軸を組み合わせると、次のような表になります。
| 構成 | 月額目安(USD) | 月額目安(円換算・150円/$) |
|---|---|---|
| ①最小構成(RAGなし) | $10〜40 | 約1,500円〜6,000円 |
| ②RAGあり(S3 Vectors版) | $10〜41 | 約1,500円〜6,150円 |
| ③RAGあり(OpenSearch Serverless版・standby無効) | $254〜284 | 約38,100円〜42,600円 |
| WAF追加(①〜③いずれにも加算) | +$10〜20 | +約1,500円〜3,000円 |
数字が揃ったところで、実際にどの構成から始めるべきかを整理します。
結論(自社はどの構成から始めるべきか)
RAGが不要な用途(チーム管理・ExApp連携だけで十分な場合)は、迷わず構成①から始めるのが現実的です。月$10〜40程度なら、PoC予算としても通しやすい金額です。
社内文書を検索させたい場合は、まずS3 Vectors版のRAGから検討してみましょう。本記事の前提ではOpenSearch Serverless版より固定費を抑えられます。ただし、検索機能・レイテンシ・既存実装との互換性で要件を満たさない場合は、OpenSearch Serverless版を比較対象にします。
WAFは「アクセス元を制限する要件があるか」で判断します。自治体・金融機関に限らず、個人情報を扱う企業やコンプライアンス要件がある企業でも該当するケースは多く、月$10という固定費の安さを考えると、該当する要件があるなら有効にしておいて損はないと考えています。逆に、そうした要件が特にない社内PoCであれば、無理に有効化する必要はありません。
まとめ
源内をAWSで動かす際の月額コストは、RAGの有無・RAGのバックエンド・WAFの要否という3つの軸で変わります。OpenSearch Serverless版では固定OCU課金が主なコスト要因になるため、PoCではS3 Vectors版との比較が重要です。
本記事の数字はAWS公式の最新料金をもとにした試算であり、実際の請求額は使用量次第で変動します。まずは自社の想定ユーザー数・利用頻度を洗い出し、AWS Pricing Calculatorで構成①相当の最小コストから試算していきましょう。
参考文献
- Amazon OpenSearch Service Pricing — OpenSearch ServerlessのOCU課金体系
- Amazon S3 Pricing — S3 Vectorsのストレージ・リクエスト料金
- AWS WAF Pricing — Web ACL・ルール・リクエストの料金
- Amazon Bedrock Pricing — オンデマンド料金体系
- AWS Free Tier — 無料利用枠の概要
- Scale to zero for Amazon OpenSearch Serverless — NextGen CollectionsのScale to Zero機能
- digital-go-jp/genai-ai-api — RAGバックエンドとstandby replicaのデフォルト設定
- 源内AIとは何か——インフラエンジニアがデジタル庁OSSでサービスを作ることにした理由 — 源内の概要・商用利用の前提
- 源内AIのコードをGitHubから読む——genai-webとgenai-ai-apiのAWS構成 — WAF実装・RAG構成の詳細